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コワーキングスペースの利用料は経費になる?適切な勘定科目は?
フリーランスのような個人事業主のなかには、コワーキングスペースを利用して仕事をする人もいるでしょう。その際コワーキングスペースの利用料は経費にできそうですが、どのような会計処理をするのが適切でしょうか。ここでは、そもそもコワーキングスペースの利用料は経費になるのかどうか、また経費で落とすにはどの勘定科目が適切なのかなどを紹介します。
コワーキングスペースとは?
コワーキングスペースとは、個人やさまざまな企業が共同で利用するワークスペースのこと。通常オープンスペースでフリーアドレス形式になっています。コワーキングスペースにもよりますが、利用頻度やワークスタイルに合わせて、月額制や従量制で利用できるのが一般的です。コワーキングスペースには次の特徴があります。
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仕事に集中できる環境が整っている
多くのコワーキングスペースでは、無料Wi-Fiや複合機など仕事に必要な基本的な設備が整っています。その他フリードリンクや会議室、受付など、コワーキングスペースによって、さまざまな設備やサービスが用意されています。
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初期費用が抑えられる
通常の専用のオフィスを借りる場合は敷金や礼金が発生します。また、必要な設備をそろえる費用も必要で、初期費用がかさみます。コワーキングスペースなら、そういった初期費用を抑えることができます。
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効率的に利用できる
時間単位のように従量制のドロップイン利用が可能なコワーキングスペースも多くあります。必要な日、必要な時間だけ利用することができ、無駄がありません。
以上紹介したコワーキングスペースの特徴は、コワーキングスペースを利用するメリットとも言えます。
コワーキングスペースを利用するメリット、またデメリットについてさらに詳しく知りたい方は「今注目のコワーキングスペース!メリット・デメリット、選び方を解説」をご覧ください。
では、コワーキングスペースの利用料やそれに付随する費用は「経費」になるのでしょうか? このあと見ていきましょう。
コワーキングスペースの利用料や関連費用は経費になる?
仕事をするためにコワーキングスペースを借りた場合の利用料は、事業に関連する支出であるため経費と認められるのが普通です。また、コワーキングスペース内で会議室を利用した場合の料金やコワーキングスペースに通うための交通費なども、事業のために発生したのであれば、通常経費になります。
経費と認められれば所得から差し引くことができます。所得税は所得に対して課税するため、経費と認められるものをもれなく経費として計上することは、節税につながります。適切に会計処理をしましょう。
コワーキングスペースの利用料やその他の関連費用を経費として計上する際に会計処理で迷うのが、どの勘定科目で記帳するかということではないでしょうか。このあと説明します。
コワーキングスペースの利用料や関連費用の適切な勘定科目は?
事業に関連する費用は帳簿に記録(記帳)する必要があります。
帳簿は自身が経営状況を把握したり税務署に対して収支を明らかにしたりするためのものですので、誰が見てもわかるように記帳することが求められます。そのため発生した費用を適当に分類して記帳するのではなく、費用の内容に合わせた「勘定科目」で記帳していきます。勘定科目とは、費用を性質ごとに分類するための項目です。
コワーキングスペースの利用料や関連費用を経費として計上する際の適切な勘定科目を紹介します。
コワーキングスペースの利用に関連する費用の勘定科目
コワーキングスペースの利用料に関連する費用の勘定科目は以下のとおりです。
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入会金……「諸会費」
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事務手数料……「支払手数料」
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月額契約の場合の月額利用料……「地代家賃」
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ドロップインの利用料……「雑費」もしくは「会議費」
ドロップインの利用料は固定費ではないので「地代家賃」はなじみません。「雑費」としてもいいですが、「雑費」は年数回しか発生しないような支出に使用するのが一般的です。利用頻度が月1回以上といった形でコンスタントにあるなら「会議費」でもいいでしょう。
ドロップインの利用料のように、複数の性質をもつ費用は珍しくありません。統一されたルールはないため、性質に応じて個別に判断していくので構いません。ただし、一度決めた勘定科目はむやみに変更しないようにするのが無難です。
コワーキングスペースの付帯設備の利用に関連する費用の勘定科目
コワーキングスペースで発生する費用は、コワーキングスペースの利用に関するものだけではありません。例えば会議室を借りることもあるでしょう。その際の費用については、次のような処理が考えられます。
月額利用料を「地代家賃」として計上していても、会議室を借りた場合は別途「会議費」として経費に計上するのが適切でしょう。またその際にモニターやホワイトボードなどの備品をレンタルした場合は、それらの費用も「会議費」に含めることができます。あるいは、会議費と分けて「賃借料」としても問題ありません。
会議の内容によっては「会議費」以外の勘定科目の方が適切なこともあります。例えばサービスや商品の説明会を開いた場合は「広告宣伝費」や「販売促進費」とすることもありますし、セミナーを開いた場合は「セミナー運営費」とすることもあります。
会議に伴い資料を印刷することも多いでしょう。そのような印刷代は「事務用品費」もしくは「消耗品費」とするのが一般的です。しかし、サービスや商品の説明会における資料を印刷した場合は、「広告宣伝費」に含めることもできます。
なお、コワーキングスペースの複合機で印刷した際の印刷代は、月額利用料の請求書に記載されたり複合機からレシートが出力されたりします。費用の内訳がわかるように請求書やレシートは保管しておきましょう。
その他関連する費用の勘定科目
コワーキングスペースの利用に関連する費用で経費に計上できるものは他にもあります。それらの勘定科目を見ていきましょう。
例えばコワーキングスペースへ向かうための電車代やバス代は「旅費交通費」となります。また、コワーキングスペースの会議室が満席だった場合には、カフェを利用することもあるでしょう。商談相手との交渉や打ち合わせでカフェを利用した場合のカフェ代も「会議費」とすることができます。ただし、カフェ代はプライベート利用と区別がつきにくく、注意が必要です。カフェを経費とする場合はレシートに打ち合わせ内容や商談相手の情報をメモしておくと安心です。
なお、同じ飲食に関する費用でも、商談相手や顧客と親睦を深めるための食事なら「接待交際費」となります。業務に関連する相手に手土産を用意する場合の費用も「接待交際費」で問題ないでしょう。以上はコワーキングスペースとは関係ありませんが、一般的な知識として覚えておくといいかもしれません。
コワーキングスペースに関連する経費を適切な勘定科目で処理し、正しく確定申告をしよう
コワーキングスペースに関連する費用を適切な勘定科目で経費に計上したなら、正しく確定申告を行います。確定申告についての基本的な知識をあらためて確認しておきましょう。
個人事業主の確定申告
個人事業主の確定申告には白色申告と青色申告があります。どちらの申告でも帳簿上の事業収入や経費を「確定申告書B」に記載して税務署に提出します。白色申告の場合は簡易な帳簿作成で問題ありませんが、青色申告の場合は厳密な帳簿作成が求められます。また、事前に開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出しなければなりません。青色申告は白色申告に比べてそのように手間がかかりますが、青色申告特別控除という特典があります。
「青色申告特別控除額」は、以下のように「55万円(令和2年分より)」と「10万円」の2種類あります。
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青色申告特別控除 最大55万円
複式簿記で記帳する、損益計算書や貸借対照表を確定申告書に添付するなどの要件を満たすことで、最大55万円の控除を受けることができます。また、その際に電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存を行えば、さらに控除額が10万円上乗せされ、最大65万円になります。
電子申告とは、インターネットを利用して電子的に申告をする手続きのことです。一方電子帳簿保存とは、帳簿を電子データのままで保存することを言います。電子帳簿保存をするには、事前に申請書を税務署に提出しておかなければなりません。
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青色申告特別控除 最大10万円
複式簿記で帳簿付けするといった最大55万円の青色申告特別控除を受けられる条件をクリアしない青色申告者は、控除額が最大10万円になります。
確定申告や帳簿処理の注意点
前述のとおり、青色申告を希望するなら事前に税務署へ申請が必要です。また白色申告、青色申告にかかわらず、確定申告後も、帳簿を所定の期間保存しておかなければいけません。保存期間は白色申告であれば原則5年、青色申告であれば原則7年間です。また、請求書や見積書、納品書、送り状などの取引に関する書類の保存は5年間となっています。コワーキングスペースの利用料の領収書なども、5年間は保存しておきましょう。
節税にもつながる!コワーキングスペースを賢く利用しよう
会社に属さない個人事業主にとって、コストと手間を抑えて仕事をする場所を確保できるコワーキングスペースはありがたい存在ではないでしょうか。利用頻度に応じて「月額利用」「ドロップイン」と使い分けることができる点も魅力です。
自身のワークスタイルに応じて無駄なく利用できるコワーキングスペース。経費に計上することで節税にもつなげることができます。今回ご紹介した内容を参考に、正しく会計処理をして経費に計上することを忘れないようにしましょう。